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行政提唱の戦略経営理論で自社のビジネス環境の変革をものづくり白書のダイナミック・ケイパビリティをわかりやすく解説!

目次


    新型コロナウイルス感染症の影響で経済や生活など、さまざまな概念が覆りました。満員電車で通勤していた全国民の一部は在宅勤務をすることとなり、接触を良しとしない感染症のため飲食店は長期の時短営業や休業を余儀なくされ、セルフレジやキャッシュレス決済が促進されました。また外出時にはマスクが必須となり、マスクをしていない人の方が異質として見られる世の中に変貌しました。そしてその世の中の変貌にかかった時間は、およそ1年足らず。

    これは企業の在り方にもいえることで、対面営業が難しくなった時代に対応し、2019年ごろにはほとんどの人に馴染みがなかったZoomやGoogle meetでのWebミーティングが主流となりました。そして潜在顧客との接触が叶わなくなった今、コロナ禍前とは比べ物にならないほど、SEOやコンテンツマーケティングを活用したWebでの集客が重要視されています。

    企業の立場で考えてみると一見ピンチのように思える状況ですが、このような社会全体を巻き込む大きな変化はピンチにもチャンスにもなりえます。時代の潮流によって主力事業が衰退していく企業もあれば、変化をうまく活用して新しい事業を展開し、成功を収める企業もあるでしょう。この企業の明暗を分けるといわれている経営概念が、「ダイナミック・ケイパビリティ」です。構築と再構築を繰り返し時代に即した企業体制を常に生み出せる体制をつくること、その企業の変革体制はいま、行政も旗を振って推進しています。

     

    ものづくり白書とは、経済産業省・厚生労働省・文部科学省が共同発表する日本のものづくりに関する報告書です。この『ものづくり白書2020』では、おもに製造業などで社会の変化を味方につけたい企業が取り入れるべき考え方である「ダイナミック・ケイパビリティ」が紹介され、一時注目ワードとなりました。

    本記事では、ものづくり白書で取り上げられ、注目ワードとなったダイナミック・ケイパビリティを解説します。「人々の生活にデジタル技術が浸透し、生活やビジネスがより良い方向に変化していくこと」を指すデジタルトランスフォーメーション(DX)との関係性も説明していきます。また、マーケティングにおいて社会を把握することは必要不可欠。たとえ経営層でなくとも、変革が必要とされる現代においては知り得た方がいい有益な知識となるはずです。

    自社のデジタルマーケティングやDX促進に課題を持っている担当者さまだけでなく、企業の変革に対して必要性を感じている方はぜひ参考にしてみてください。

     

    『ものづくり白書2020』の注目ワード「ダイナミック・ケイパビリティ」


    「capability(ケイパビリティ)」には能力、才能、性能、可能性といった意味がありますが、ビジネスの場におけるケイパビリティは「組織の遂行能力」といった意味合いを持ちます。

    『ものづくり白書2020』では、ダイナミック・ケイパビリティを「企業変革力」と定義しています。私たちの想像を超えるスピードで社会が変化していくなか、企業には同じ場所にとどまらず、常に組織やビジネスモデルをアップデートしていくことが求められているのです。

    ここからは、ダイナミック・ケイパビリティについて、さらに深掘りしていきます。

    ダイナミック・ケイパビリティとは変革をもとにした経営概念

    もともと、ダイナミック・ケイパビリティはアメリカのカリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授、デイヴィッド・J・ティース氏が提唱した戦略経営論でした。

    『ものづくり白書2020』では、戦略経営論における学術用語だったダイナミック・ケイパビリティを「環境や状況が激しく変化する中で、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力のこと」と説明しています。
    2020年版『ものづくり白書2020』第1章 第2節「不確実性の高まる世界の現状と競争力強化」より引用)

     

    重要なのは、なぜこの概念が必要とされているのか。それは確実なものなどなにもなかったからに他なりません。新型コロナウイルス感染症の影響で、現代の不確実な実情が浮き彫りになり、売上や利益の低下など、見通しが立たない状況が続いています。それを解決するための概念として、行政が発表したのがデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された戦略経営論ダイナミック・ケイパビリティという考え方なのです。この概念のなかでは、いままでを保つのではなく、時代の変化や世間の流れに合わせて柔軟な対応をすることが必要と謳われています。

    極端な話、今日は豆腐屋でも、時代の変化によっては明日からはまったく違う業態を展開して変革していく柔軟な考え方を持つ、ということです。豆腐だけで売上が上がらないなら、豆腐ドーナツの販売や健康志向ユーザーに向けたおから商品の開発など、変革をおそれない柔軟性を持って経営に挑むということです。イートインスペースをつくり、キャッシュレス決済を採用し、セルフレジで顧客に食べ物や飲み物を提供する、おからを使用した健康志向の料理教室を開く、例えばの話ですが、そんな元豆腐屋がこれからは求められていくのです。
    変化が激しい現代社会では「確実なもの」など存在しません。昨日の常識が、今日にも通用しているとは限らないのです。常に競争力を維持するためにも、企業は社会の変化に向き合っていく必要があるのです。

    ダイナミック・ケイパビリティとオーディナリー・ケイパビリティ

    ダイナミック・ケイパビリティを調べようとすると、必ず「オーディナリー・ケイパビリティ」という言葉が紐づいてきます。

    オーディナリー・ケイパビリティは、企業が与えられた経営資源をもとにして、効率的に利益をあげようとする能力のことを指します。大胆な変化もいとわないダイナミック・ケイパビリティとは対照的に、オーディナリー・ケイパビリティはコスト削減や行動効率化といった点に注力します。

    これまで日本では、このオーディナリー・ケイパビリティに比重を置く企業が珍しくありませんでした。もちろん「通常能力」と表されることもあるオーディナリー・ケイパビリティも無視できるものではありませんが、株主価値や労働生産性、利益の最大化といった部分に固執しすぎると、時代の変化に置き去りにされて事業が立ち行かなくなることもありえるのです。

    ダイナミック・ケイパビリティを構成する理論


    ダイナミック・ケイパビリティをより深く理解するためには、以下で説明する2つの理論を押さえておく必要があります。ダイナミック・ケイパビリティの構成要素には、この2つの理論が大きく関わっているからです。

    ①競争戦略論

    競争戦略論は、アメリカのハーバード大学経営大学院教授であり経営学者のマイケル・ポーター氏が提唱した戦略経営論です。

    ポーター氏は、競合他社に打ち勝ち、競争で優位性を築くために3つの基本戦略を掲げました。コスト面で最優位に立とうとする「コストリーダーシップ」、他社と一線を画す製品やサービスで業界のトップランナーを目指す「差別化」、特定の顧客層に焦点を絞る「集中」。これらは経営の基礎的な考え方であり、多くの経営者や経営を志す人々の参考となりました。

    ②資源ベース論

    資源ベース論は、アメリカの経営学者であるエディス・ペンローズ氏がアイデアの源泉となった理論を提示したことで生まれた戦略経営論です。

    ペンローズ氏は、企業がそれぞれに特性の異なった生産資源(=土地や設備、人材やスキルなど)を保有しており、その生産資源の差が競争力の差に直結すると主張。競合他社に打ち勝つためには、良質な生産資源を保有することが重要と説きました。

    ペンローズ氏の理論は30年近くも日の目を浴びずに埋もれていましたが、1990年代以降には進化を遂げ、ポーター氏の競争戦略論の代案として大きな注目を浴びるようになりました。さまざまな議論の結果、いまでは良質な生産資源を保有するだけではなく、環境や状況の変化に合わせて手にした生産資源を組み替えていく必要性が叫ばれています。

    企業の経営戦略論は、ポーター氏の競争戦略論からペンローズ氏の資源ベース論へと引き継がれていき、ダイナミック・ケイパビリティへとつながっています。いわば、ダイナミック・ケイパビリティは、競争戦略論や資源ベース論を現代社会に合わせてアップデートした“最新バージョンの経営理論”なのです。

    ダイナミック・ケイパビリティの3つの要素


    提唱者であるティース氏は、ダイナミック・ケイパビリティを3つの能力に分類しています。ここからは、その3つの能力について解説していきます。

    ①感知(Sensing)

    感知(Sensing)は、脅威や危機に気がつく能力のことを指します。

    環境や状況の変化を感知することができなければ、新しい事業を生み出していくことはできません。たとえば、国土の防衛においてレーダーが重要である理由を考えてみましょう。レーダーは、外敵からの攻撃の予兆を把握するために役立ちます。レーダーで事前に環境や状況の変化を察知することで、防衛のための具体策を練ることができるのです。

    また、時代の移り変わりが自社の主力事業にどのような影響を及ぼすのかという予測を立てることも重要です。的確な予測を立てるためには、自社のビジネスモデルをしっかりと理解している必要があります。

    ②捕捉(Seizing)

    捕捉(Seizing)は、機会を見出し、既存の資産・知識・技術を応用して競争力を獲得する能力のことを指します。

    社会の変化をピンチではなくむしろビジネスチャンスだと捉える力は、いま最も企業に求められている要素のひとつでもあります。良質な生産資源を保有している企業はすでにアドバンテージを得ているわけですから、それを有効活用していきましょう。

    ③変革(Transforming)

    変革(Transforming)は、競争力を持続的なものにするために組織全体を刷新し、変容する能力のことを指します。

    環境や状況の変化が激しい現代社会において、企業は常に高い競争力を維持していく必要があります。競争力が落ちれば、主力事業が一気に衰退してしまうことにもなりかねないからです。

    自社の脅威や危機になりそうな変化をプラスの力に変えられるよう、常に組織をベストな状態に再構成していきましょう。設備は整っているか、人材の配置は適切か、スキルが発揮されやすい環境があるかなど、注視すべきポイントは多々あります。持続的な企業経営は、社会の変化に対応できるように組織がアップデートされているかどうかに懸かっているからです。

    必要不可欠なDXとデジタルマーケティングの重要性


    ダイナミック・ケイパビリティとともに、よく耳にするようになったDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ダイナミック・ケイパビリティの推進に不可欠な要素のひとつ。ダイナミック・ケイパビリティの変革をデジタルの面から支えていくのがDXなのです。

    これは『ものづくり白書2020』でもDXがダイナミック・ケイパビリティを強化する点について下記のように記載されています。

    “IoTやAIといったデジタル技術は、生産性の向上や安定稼働、品質の確保など、製造業に様々な恩恵を与える。しかし、今回のものづくり白書では、デジタル技術が企業変革力を高める上での強力な武器であるという点を最大限に強調する”

    (2020年版『ものづくり白書2020』総論「不確実性の時代における製造業の企業変革力」より引用)

    また『ものづくり白書2021年版』でも、『ものづくり白書2020』と同様に

    “ダイナミック・ケイパビリティの要素は「感知」「捕捉」「変容」の三能力であり、これらの能力を高めるためには、デジタル化が有効である”

    と掲載されています。
    2021年版『ものづくり白書』より引用

    DXで重要なのは「デジタル変革をすること」。

    そしてそのデジタル変革が、ダイナミック・ケイパビリティの一部となり一歩となるのです。経営方針を変更したり事業内容の見直しをしたりと、守備範囲が広いダイナミック・ケイパビリティですが、そのなかでも一番手軽に取り掛かれるのがDXを含むデジタルマーケティングの領域です。

    各住戸に配っていた出前チラシを紙からアプリへ、サポートセンターの対応を電話からAIチャットボットに切り替えるといったデジタルシフトは、やがて私たちの生活や企業のビジネスモデルに大きな変革が巻き起こる状態(=DX)を実現していくことできます。そして、DXの大きなうねりが最終的に、変化する環境や状況に対応するべく変革をしていこうというダイナミック・ケイパビリティという新しい概念を押し進めてくれるのです。

    日本企業はダイナミック・ケイパビリティに向いている


    ダイナミック・ケイパビリティについて知っていくと「日本の企業は変革していくことが苦手なのでは?」と思うかもしれません。ビジネスシーンで「前例がないから」「これまでのやり方で上手くいっていたから」といった理由からプロジェクトが前に進まなかったという経験をした方もいるのではないでしょうか。しかし、日本企業がダイナミック・ケイパビリティを先取りして実践していた時代が、かつてあったのです。

    1980年代、日本企業は世界で大きな存在感を放っていました。バブル経済の恩恵を受けていたのもたしかですが、当時の日本企業は変化に対する柔軟性を持っていたようです。

    1986年に竹内弘高氏と野中郁次郎氏が発表した論文『The New New Product Development Games』では、企業の「新製品開発プロセス」について言及。他社との競争に勝てる組織が持っている特長を「ある種の不安定さ」「プロジェクトチームを自ら組織化する」「開発段階を重複させる」「マルチラーニング」「ソフトなマネジメント」「学んだことを組織内で共有する」の6つだと定義しています。

    この論文が、当時成功を収めていた日本企業を分析対象にしていたことを踏まえると、かつて日本企業がダイナミック・ケイパビリティに通じる企業文化を持っていたことがわかります。日本企業には、ダイナミック・ケイパビリティを向上させる下地があるといえるのです。

    ダイナミック・ケイパビリティ実践企業の事例


    ここで、ダイナミック・ケイパビリティを実践して業績を伸ばした企業の実例をご紹介しましょう。

    IKEA

    スウェーデンが発祥のIKEAは、ヨーロッパや北米、アジア、オセアニアなど、世界各地に出店している世界最大級の家具量販店。

    「家具の店」という印象が強いIKEAですが、設立された当初は雑貨店でした。需要さえあれば何でも取り扱っていたものの、家具店と契約を結んで格安販売を開始するとこれが大当たり。途中から、家具販売に方針転換しました。

    家具を組み立て前のパーツ段階で販売するというのは、IKEA特有の手法です。製造段階で組み立てる手間を省くことで人件費や輸送費を削減し、販売価格の圧縮を実現しています。「家具が売れる」と判断するや、すぐさま事業を組み替えていく柔軟性、「すでに組み立てられた家具を販売する」という固定概念を打破していくあたりからは、ダイナミック・ケイパビリティを実践していることがうかがえます。

    また、IKEAが家具を完全自社生産に切り替えた点も、ダイナミック・ケイパビリティの実践を体現しているといえます。もともとは他社で生産された家具を仕入れて販売していましたが、競合他社との競争が激しくなったことで商品の仕入れが鈍化。すると、東欧の家具業者と提携して家具を自社生産するようになり、在庫不足を解消してみせたのです。まさにIKEAは、ピンチをチャンスに変える変革力を発揮し、業績を拡大させてきたのです。

    富士フイルム株式会社

    日本の精密化学メーカーである富士フイルムも、一時は経営難に陥るというピンチを経験しました。

    その原因は、1990年代に一気に普及したデジタルカメラ。写真のフィルムを扱っていた同業他社の多くは、この時代の変化についていくことができずに倒産に追い込まれていきました。

    富士フイルムがとった選択は、写真フィルム製造で培ってきた技術やノウハウを生かした新事業の展開でした。開発・生産した液晶画面を守る保護フィルムはデジタルカメラに使われるようになり、結果的に主力事業を衰退に追い込む危険性のあったデジタルカメラの普及を追い風にしたのです。

    また、富士フイルムが行なった既存技術やノウハウの再利用は、保護フィルムだけにとどまりませんでした。化粧品や健康食品、記録メディアなどさまざまな事業に参入し、ビジネスモデルを拡大。2020年には新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の増産を開始したことを発表し、医薬品分野でも注目を集めています。

    まず自社でできることはなんなのか考えてみることが大切


    社会の変化を捉え、ピンチをピンチのままにせずチャンスへと変えていく。変革が必要だと判断すれば、設備投資や適切な人材配置、スキルを発揮しやすい環境の整備などに着手し、組織をベストな状態に再構成する。これまでの実績に固執せず、既存技術やノウハウを再利用して新たなビジネスモデルを築いていく……。

    これまで足で取っていた営業の案件をホームページなどのWebを軸に展開する、各事業部のあり方を見直して合併や小規模化するなど、大企業や中小企業を問わず検討できる部分はあるはずです。しかしこの変革が必須なわけではありません。ただ、2019年の年末から流行した新型コロナウイルス感染症の影響で、時代や人々の生活に大きく変革をもたらしたということは事実にほかなりません。社会に対応した“最新バージョン”であろうとするダイナミック・ケイパビリティこそ、いま最も企業に求められている経営概念でありワークフレームではないでしょうか。次の時代へ生き残っていくためには、まず自社でなにができるのかについて考えていく必要があります。

    自社のビジネスモデルをしっかりと理解し、保有している生産資源がいまの社会の実態に合ったものなのかを検討することは、ダイナミック・ケイパビリティ獲得のためにすぐにでも始められることかもしれません。もし、自社の時代対応への取り組みが遅れているのであれば、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためにも「まずはなにができるのか」を真剣に検討を始めてみてもよいのではないでしょうか。
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